能舞台公演

会期中2回にわたり、本展に合わせて特別に編集された能を会場内で開催します。

公演名

『翁』(神歌) 謡と小鼓による

日時  11月19日(土)16時30分~18時00分

謡    シテ 梅若桜雪(実改)

        ツレ・地謡 川口晃平

        小鼓 大倉源次郎

「『翁』の宇宙論をベースにエコロジーや生態系を再定義する展示」をコンセプトに、19日には梅若桜雪師の『翁』(神歌)、26日には梅若桜雪師がシテを勤めた新作能『不知火』を取り上げる。『翁』は能にして能にあらずといわれ、古い芸能の痕跡を多くとどめた天下泰平、国土安穏、五穀豊穣を祈る祝言の舞。能・狂言の全ての源、根本芸であり、人間と自然との関係性が深く刻印された芸能である。この『翁』の謡(神歌)を梅若家の当主であり、謡の名手である人間国宝の梅若桜雪(実改)師が謡い、大倉流小鼓宗家で人間国宝の大倉源次郎師の小鼓の演奏が入る。

公演名

石牟礼道子新作能『不知火』―謡による

日時  11月26日(土)16時30分~18時00分

謡    梅若桜雪(実改)

        地謡 川口晃平

『不知火』とは、石牟礼道子が水俣病の起こりとその顛末を神話的に描いた能作品であり、穢れた地上の浄化を人新世的な視点から解釈した作品である。企画の契機となった本作は本展覧会の核をなす作品である。今回はその『不知火』のシーンを編集し、新作として発表する。本作の謡(神歌)を梅若家の当主であり、謡の名手である人間国宝の梅若桜雪(実改)師が謡い、シテ方観世流能楽師、梅若会所属の川口晃平による地謡が入る。

梅若桜雪(実改)

観世流シテ方、重要無形文化財保持者(人間国宝)日本芸術院会員、1948年五十五世梅若六郎の次男として生まれる。2018年四世梅若実を襲名、2022年観世宗家より老分と雪号を許され梅若桜雪となる。石牟礼道子「不知火」の振付とシテ(2022年)、ギリシア・エピタウロス古代円形劇場での「冥府行」(2015年)、節付とシテを勤める。photo by 森山雅智

大倉源次郎

能楽小鼓方大倉流16世宗家 (大鼓方大倉流宗家預かり), 公益社団法人 能楽協会理事、一般社団法人 日本能楽会会員(重要無形文化財総合認定)。流派を越えて21世紀の能を考える「能楽座」座員20代より通常の能公演はもとより、誰もが日本文化である「能」と気軽に出会える よう「能楽堂を出た能」をプロデュースし「近鉄アート館能」「六甲アイランド能」「叶匠寿庵薪能」などを制作する。

川口晃平

シテ方観世流能楽師、梅若会所属。昭和51年、漫画家かわぐちかいじの長男として生まれる。慶應義塾大学在学中に能に魅せられ、能の道を志す。大学卒業後の平成13 年、五十六世梅若六郎玄祥に入門。その年復曲能「降魔」にて初舞台。平成19年独立の後、今までに能「翁」の千歳、能「石橋」「猩々乱」「道成寺」を披く。舞台に立つ傍ら、能楽普及のレクチャーを各地で行う。

笠井賢一(演出)

今尾哲也氏に(歌舞伎研究)に師事。歌舞伎俳優八世坂東三津五郎秘書として著作の助手を務める。劇作演出家として古典と現代をつなぐ演劇活動を続ける。梅和桜雪師とは『不知火』の他に、多田富雄作『花供養―白洲正子の能』の演出、ギリシャ・エピダウロス古代円形劇場での『冥府行』の能本を書く。

石牟礼道子(原作)

小説家。熊本県天草生まれ。公害病の原点と呼ばれる水俣病の患者たちに終生寄り添い、その声なき声を豊かな方言でつづることで、切実な被害の実態を伝え続けた。『苦海浄土』で語られる「水俣病わかめといえど春の味覚」という記述に象徴されるように、資本主義、汚染された大地、人間の活動、そして自然が割り切れない関係で立ち現れる。photo by 芥川仁